五十川の沸石
(山形県西田川郡温海町五十川)
五十川は新潟県岩室村間瀬と並んで、沸石の産地として有名なところです。図鑑によく登場しているセンチ級の方沸石を求めて、この夏行ってみました。
8/26(土)
鶴岡市から国道7号線を新潟方面に進みます。しばらくすると日本海が見え、海岸に沿って走るようになります。約30分で羽越本線の五十川駅に到着です。駅付近を見て回りましたが沸石が出た場所は駅のすぐ前のトンネルの上の採石場跡のようです。トンネルの鶴岡側に駐車できるスペースがあったのでそこに車を止めました。採石場跡は立入禁止で柵があります。駐車スペースから海岸に下りられるよう丈夫な綱が下がっていましたので、それをつたって下りました。釣り人が綱をかけたようです。海岸に向かってコンクリートが打ってあるところを下りて海岸に出ました。当日は昼前で潮が引いていましたが、潮が満ちると下りられるかどうかよくわかりません。海食台のようになっているところを歩いてみましたが、あちこちに空洞があって直径1,5〜2cmで半球の形をした沸石が入っています。ねらった方沸石は数ミリ大の微細な集合しか見あたらず、あきらめかけましたが、1cmの大きさで結晶の一部欠けている物が見つかりました。気温33度の中約3時間の採集で腕は真っ赤に日焼けしてしまいました。軍手をした手首だけが白いのには笑ってしまいました。一段落して駐車場所まで戻ると、海から吹いてくる生暖かい微風さえ気持ちよく感じられました。
五十川の沸石産地はここだと思われますが、資料は持ち合わせていませんのではっきりしたことはわかりません。五十川の上流の山五十川には採石場が稼働しているとのことですが、今回は行っていません。なお、採石場跡の崖はひび割れた石が今にも落ちそうな感じで乗っかっていますので、絶対近づかないようにしましょう。
今まで沸石については無色、小さい、わかりにくいという理由であまり関心がありませんでしたが、今年の夏、ふとしたことから俄然興味がわいてきました。さっそく持ち帰った半球状の沸石を初心者なりに調べてみました。産出物については
「日本の鉱物」の「方沸石のほかソーダ沸石、ギロル沸石などの美しい結晶が知られている。」しかヒントはありません。半球状の沸石は実態顕微鏡で見ると薄板柱状をしています。薄板柱状で母岩は玄武岩ということで「楽しい鉱物図鑑」からトムソン沸石ではないかと予想しました。サンポールに浸すと白色コロイド状の物が分離します。また、この大きな半球のまわりには、少し小さめで白雲母のように薄くはがれる鱗片状のものが放射集合体になっているのがたくさん見られます。柔らかく、球状の物は中央がへこんでいます。こちらは、ギロル石と思われます。が、両者とも実物は見たことがありません。ということで、どなたか五十川の沸石についてご存じの方、教えていただければ幸せます。(後日、鉱物愛好の方からトムソン沸石でよろしいとのご教示を受けました。どうもありがとうございました。)
(平成12年)
参考図書 ポケット図鑑 日本の鉱物 (成美堂出版)
楽しい鉱物図鑑@ A (草思社)
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