富内鉱山のクロム鉄鉱(勇払郡むかわ町穂別富内)

北海道平取町近辺の灰クロム石榴石をともなうクロム鉄鉱の採集は数年来の夢でした。今回、2000年に噴火した有珠山の西山火口群の見学とセットで旅行を計画しました。また、ジェット機の格安割引も背中を押してくれました。

6/17(木)
「今日はよい天気で良かったですね。」とホテルで言われて、出発したものの、一時間も経たないうちに雨が降り出してきた。これで三日続きの雨となる。島呂布沢川の手前の脇道に、九時半に到着。雨が止むのを待てない性格で、早速、トンカチと長靴に傘を差し、携帯ラジオを鳴らしながら脇道を進みました。
 100m先の沢に架かる橋が流されているため、沢の上流側を渡り笹の中に突入。ところがクリークがあって小道に戻れない。やけ気味にがむしゃらに笹をかき分けてやっと小道へ。結果、ズボンはびしょぬれ、この上なく気持ち悪い。(下流側が正解だったことが帰路で分かる)クロム鉄鉱 さらに進むと左手に建物が見えてきた。またも腰までの背丈の笹をかき分けて建物の周りを調べるが、地面は泥だけ。「何か変だけど、ここだよな。今回は坊主かな」とぼやきながら小道に戻りました。
 遙か前方にコンクリートの大きな道路のようなものが見える。「地形図に道路は載ってなかったけど」と怪しみながら進むと、なんと発電所跡。勘違いして変なところを彷徨っていたのです。気を取り直して進むと、またも発電所手前で道が途切れています。泥土の急斜面を降りて、鵡川の岸づたいに進みました。この砂地にたくさんの足跡を発見。二本の指痕は鹿らしい。が、その中に三本指、さらには子供の五本指の跡が・・・。「これって熊だよな。」しかも、三日間雨が降ってるのだから今朝のもののようだ。とにかく、ラジオを鳴らしながら、トンカチで岩をカンカン叩きながら建物に向かいました。
 建物の中にはビニールシート上に鉱石が広げられていました。すべて黒色で光沢の強いクロム鉄鉱からなっています。産状から他の鉄鉱石を疑う余地はありませんが、帰宅後、条痕色を確かめてみました。磁鉄鉱、黒色、赤鉄鉱、赤褐色、本鉱は褐色となりました。また表面に目の覚めるような黄緑色の灰クロム石榴石が皮膜状に付いているものもあります。ルーペで見ると部分的に濃い緑色をした粒も見られました。貴重な貯鉱なので、ハンマーで叩くのは最小限にし、二つほどいただきました。帰る段になって、雨も上がりました。やはり岩をカンカン叩きながら車まで戻りました。

P.S. その他の情報
 (1)白老町クッタラ湖外輪山の灰長石(「日本の鉱物」巻末の産地ガイド)は、ゲートが開いていたので、車で目的地の麓まで行けました。が、熊の出没情報があったのと雨天のため、車を止めた近くで石を叩き、1cm四方のもので満足しました。
 (2)幌満のカンラン石は時間の関係であきらめ、代わりに日高町三岩の採石場で許可をもらって、カンラン石を拾いました。
 (3)その他、有珠山西山火口群の見学は良かったです。若いカップルが「すごいね!すごいね!」と言い合ってるのが印象的でした。

 

(平成22年)

参考図書         ポケット図鑑 日本の鉱物 (成美堂出版)
        鉱物情報 NO127      (鉱物情報)
             有珠山 火の山とともに (北海道新聞社)

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